ジーンズの価格
出かけた先で初めて出会う人とお話しをする機会が多い僕ですが、よく「何の仕事されてるんですか?」と聞かれます。
「ジーンズ屋さんです。」
と笑いながら答えることが多いんですが、この「ジーンズ」っていう言葉に反応する人は、必ずといっていいほど「へぇー、ジーンズのデザイナーさんですか。ちなみにどれくらいのお値段ですか?」となります。
そりゃそうですよね。例えば商品写真や説明を聞いて興味を持った多くの人が、「穿いてみたい」と思うと、次に思い浮かぶのが「価格」です。
そこで、「定番の物で2万円ほどです。」とお答えすると、必ず「ほう、やはり良いお値段しますね。」という返事が返ってきます。
確かに、2万円のジーンズは決して安い物ではありません。プレミアムジーンズです。
では何故、2万円という価格になるのか?何がプレミアムなのか?
以前にこのブログで、「ジーンズの価値」という記事を書いていますが、
せっかくなのでこの機会に少し説明させて下さい。
1.パターンのあれこれ
まずデザインをパターン化する為に、「パタンナー」と呼ばれる方にCADにて製図をしてもらうのですが、ここでパタンナーの腕がかなり重要になります!
下手なパタンナーに依頼すると、どんなに良い素材を使ってもとても平面的で不格好なジーンズが出来上がります。
ジーンズの場合は、生地の特性と縫製の都合上、パターンの製図方法もある程度決まっているのですが、それでもパタンナーの腕は最重要。
「Libertad」のパタンナーさんはまさに「職人」。口数は少ないものの、いつもお願いしたこと以上のものを出してくる最高のパタンナーさんです。
このパタンナーさんと打ち合わせの為の時間や、パターンの修正など、ここでも多くの知恵と時間が注がれます。
「Libertad」では、その時その時に納得のいくまでパターン修正を繰り返して生産し、実際に製品化した後、自ら着用するうちに気付いた改善点やアイデアを改良して次回作に繋げる、という作業を10年以上繰り返してきました。(長年継ぎ足して熟成したおでんのダシや秘伝のソースみたいなものですね笑)
2.生地のあれこれ
生地はいくら「国産」といってもピンキリです。
どこぞの大手メーカーが3000円程度のジーンズを販売していますが、例えば、バラしてしまうと「Libertad」のジーンズは生地の「原価」だけでその販売価格を上回ります。
3000円で販売されるジーンズということは、使用されている生地はさぞ「無料」のような生地なのでしょうね...
大量に出回っている量産用のものから生地メーカーがこだわり抜いて作った生地まで、
そして薄手のものから超厚手のものなど、数えきれないくらいの種類と色があるので、その中からイメージに合う生地を追求します。
見つからない場合はイチからオリジナルで生地を織ることも。
こだわりの強いメーカーほど、色落ちも考慮しながら糸の太さや染色方法、織り方なども細かく指定してテストを繰り返し、オリジナルのデニム生地を制作しています。
3.サンプル制作!あれこれ
生地とパターンが決まれば、縫製工場と使用する糸の色や種類、縫い方なども相談して、サンプルを制作します。
ここで、シルエットがイメージと違う、サイズが合わない、などという場合は、再度パターンから修正し、もう一度サンプルを制作します。
さらにヴィンテージ加工を施すジーンズの場合は、まず生地がどのように色落ちするかといった色落ちテストを行い、その結果を踏まえて加工方法を決定、ヒゲ型を作成したりと、ここでも多くの手間暇がかかってきます。
加工サンプルの制作では、手作業による細かい部分の加工まで、職人の方に仕上がりのイメージやニュアンスを伝えながら一緒に作業をします。
ここでもやはり職人の方の腕が全てです。
そして技術もそうですが、感性というものがとても大きく影響してきます。
一般の人が見ても全く気付かないような部分を見る感性と、それを再現するだけの技術がなければ、良い表情のジーンズは生れません。
僕は今までたくさんのヴィンテージ加工の職人を見てきましたが、僕が満足するくらいの素晴らしい感性と技術を持った職人さんは一人しかいません。
そして今「Libertad」のデニム加工を手掛けるその職人こそ、世界でも評価の高い、「デニム加工の国内最高技術者」と呼ばれるアーティストです。
4.いざ、本生産!あれこれ
納得のいくサンプルが完成すれば、やっと本生産に入ります。
もちろん、「Libertad」のジーンズを縫製するのは国内屈指の縫製技術を持つ工場。
同じパターン、生地を使ったジーンズでも、運針(縫い目の細かさ)やミシンの調整など、縫製する工場次第で全く表情が違うものが完成します。
(これはかなり高度な話ですが。)
ジーンズの縫製や縫製仕様などは、2本の異なるジーンズを見比べて「間違い探し」をしてみるとよく分かります。
この細かな縫製の違いが、人間でいうところの「品格」というもので、僕が思うにジーンズの「上品さ」でもあります。
と、かなり簡単にまとめていますが、こうして出来上がるのが「Libertad」のジーンズです。
そしてこの開発・生産に費やされた経験、知恵、技術、そして時間を考えて、この1本のジーンズの価値として、「1本20,000円」という値段をつけさせていただいています。
そして「Libertad」は可能な限りお客様に満足いただけるように、
・全国どこでも送料無料
・チェーンステッチによる裾上げ無料
のサービスを行っています。
送料(ヤマト運輸)も、チェーンステッチによる裾上げ(市場価格では2,000円程度)も、全てサービスになっているので、全て、商品価格の中に含まれると考えれば、決して「ただ高価なだけ」のジーンズではないとお分かりいただけるはずです。
「安物買いの銭失い。」といった言葉がありますよね。
そう、安くて「本当に良い物」はありません。
ある、という方は「本当に良い物」を知らないだけです。
「ファストファッション」と呼ばれる、安価で大量生産のアイテムが溢れるこの時代。
でも、僕は敢えてその対極にある「スローファッション」として、末永く愛用できる物を、これからもこだわりを持って作っていきたいと思います。
それではチャオ!

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